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樋口善一郎さん
「近江町オオムラサキを守る会」
樋口善一郎さんを訪ねて
「近江町オオムラサキを守る会」は、決してオオムラサキだけを守ると言う事だけではなく、オオムラサキが住める環境、豊かな里山の雑木林、水を守る事であります。すなわち、ひいては琵琶湖を守る事になります。今回、「近江町オオムラサキを守る会」を18年前に結成され、オオムラサキに関する調査活動や啓蒙活動、増殖活動をされている樋口善一郎さんにお話を伺いました。
樋口善一郎(ひぐちぜんいちろう)
プロフィール:昭和18年7月生。彦根東高校卒業後、郵便局勤務。昭和57年「近江町オオムラサキを守る会」結成。平成2年、県自然保護財団より滋賀県の自然保護賞を受ける。

オオムラサキを飼育されるに至った経緯についてお聞かせ下さい。
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私は昔から虫は全く苦手で、触れることさえもできませんでした。そんな私とは反対に、子供はたいへんな虫好きで、よく虫を捕まえてきては、「この虫は何?」と質問され、子供の為に図鑑を見ながら勉強するようになりました。

オオムラサキとの出会いは、今から26〜27年前になります。虫好きの子供が山へクワガタを取りに行き、そこで偶然オオムラサキを採ってきたのです。それは、オオムラサキの雌で羽がかなり傷んでいて、「本当にオオムラサキだろうか」と最初は信じられませんでした。なぜならオオムラサキは環境庁のレッドデータブックの希少種で、しかも雌を見かけるのは珍しいので、まさか地元の山にいるとは思いもしませんでした。

その後、親子でいろいろ調べに歩いて、徐々にこの近江町に生息しているオオムラサキの実態が分かってきました。餌になるエノキがどこにどれくらいあるのか等の調査や、飼育、標本の作成など一から行いました。

ちょうどその頃、地元の山「かぶと山」に、ドライブウェイを建設するという事業計画が持ち上りました。このままではオオムラサキをはじめ、かぶと山に生息する生き物にとっては大変なことになるということで、役場との話し合いをする窓口として「近江町オオムラサキを守る会」を昭和57年に設立しました。当時、自然保護というのは、まだまだ世間一般には浸透しておらず、この村でたった2人からのスタートでした。その後、自然保護について徐々に関心も高まり、現在では会員約30名、地元ばかりでなく東京から九州まで県外の方もおられます。
活動の中で影響を受けられたことは、どういったことがありますか。
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「近江町オオムラサキを守る会」の活動は、大きく分けて3つあります。一つは「調査活動」で、これはどれくらいの蝶が生息しているのか、蝶の生活場所である雑木林の状態はどうなのか、餌となるエノキがどこにあり、どんな状態なのか等を調べます。二つ目は「啓蒙活動」です。これは会報の発行と自然観察会、学校の指導等を行っています。三つ目は「増殖活動」です。

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普通、いろいろな生き物の保護団体では、この増殖活動に力を入れているところが多いようです。一般的に絶滅の危機にある生き物は、増殖させて自然界に放せば増えると思われがちですが、蝶は環境の変化に非常に敏感な生き物です。環境が悪いから数が減少しているのに、またその環境に増殖させて放しても、結局は同じ事の繰り返しになります。こういった増殖活動のやり方には疑問を感じています。

また、雑木林を守ろう、里山を守ろうとよく言いますが、実際どうやって守るのか、その方法が非常に難しくこれにはかなり悩みました。オオムラサキだけが増えて、はたしてそれでいいのか。守るということは、どういうことなのか。守ることは残すことですが、人がうまく手を加えながら管理し、残していかないと、ただ残すだけでは荒れ放題になってしまいます。

「環境保全」という言葉でいうのは簡単ですが、これは大変難しいと実感しています。
活動の中で特に力を入れられていることをお聞かせ下さい。
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啓蒙活動に一番力を入れています。一人でも多くの人にオオムラサキを知ってもらいたいのです。ただ「きれいだなあ」と観賞するだけでなく、オオムラサキをとりまく環境は今どのような状態なのか、というところまで目を向けてほしいと思っています。

このことは、小学校の理科クラブやオオムラサキの飼育、中学校の野外観察会、高校などの指導を通しても伝えていきたいものです。

また、「オオムラサキを守る会」の会報を月1回発行し、いろいろな情報を発信しています。現在244号となりました。会報は、主に会員の方々、学校、官公庁へ送ったり、近くの掲示板に掲示しています。
活動において苦労されていることは、どういったことでしょうか。
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私達の会の主張と現実との間には大きな格差があります。私たちが雑木林を守ろうと言っても、現実はどんどん悪くなっているように、目指す理想と現実とのギャップをどのようにしていくかがこれからの課題です。

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最近、農村自然環境事業の一環として環境整備事業が進められることになり、この近江町が全国6ケ所の対象地域に入りました。それは、近江町にはオオムラサキやギフチョウ、ハリヨ、ゲンジボタルなど貴重な生き物が生息しているからです。

しかし、農業用水のため池が公園化され、蝶の餌となるエノキが他の場所へ植えかえられるなど、事業が完成したらオオムラサキやギフチョウが消えてしまいました。

環境保護事業ということで、住民や町に快適な環境をつくり、農村の活性化を目的として整備されたはずが、実際は貴重な生き物が消えてしまったということを我々は、どのようにとらえたらいいのでしょうか。自然と住民との共存は本当に容易ではないと改めて実感しました。
活動を通して人々に伝えていきたいことをお聞かせ下さい。
「オオムラサキを守る会」というとオオムラサキだけを守ると思われがちですが、オオムラサキを守るということはオオムラサキが住める環境を守ることであり、それは豊かな里山の雑木林を守ることです。里山を守ることは、すなわち、水を守ることであり、滋賀県で言えば琵琶湖を守ることになります。オオムラサキを守ることは、自然を守り、琵琶湖を守ることにつながっているということを観察会を通して訴えています。
今後の夢についてお聞かせ下さい。
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今の夢には、小さな夢と大きな夢があります。

まず小さな夢は、活動を続けて18年、会報も240号を超え、これまでの集大成として写真集や本を出したいと思っています。それと、四季折々の写真を入れた山のガイドブックも出したいと考えています。

大きな夢は、行政と地域住民と我々が協力して里山を守っていけるようになればいいなあと思っています。20年間のモニタリング調査を通して、雑木林はこれから100年が勝負だと考えています。現在の落葉樹(秋の終わりごろ葉が落ちる木)から常緑樹(葉が一年中枯れず、緑色をしている木、マツ・スギ等)にどんどん変わってしまうようなことになれば、そのうち四季が感じられなくなってしまいます。

みんなが山の大切さを感じて、里山を守るための何かほんの小さなことからでも始めていってほしいものです。
(2000年8月取材)
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