AYAHA GROUP 企業生活を通じて、社会とともに歩む。
Google
企業メッセージ綾羽株式会社グループ会社環境・社会貢献活動採用情報お問い合わせサイトマップホーム
企業メッセージ 「一人ひとりの生活感覚を大切にした活動で、社会とともに歩む」

琵琶湖発人間探訪目次へ
谷村昭仁さん
近江だるま保存会 谷村昭仁さんを訪ねて
能登川町には全国的に有名な「近江だるま」という郷土玩具があります。今回は、「近江だるま」の保存活動を通じて地域文化の素晴らしさを再発見し、伝承していくことを目標とされている「近江だるま保存会」代表の谷村昭仁さんと保存会メンバーの方々を訪ねました。また、活動の様子を能登川町立能登川南小学校で見学させていただきました。

近江だるま保存会 【お問い合わせ先】

代表者:谷村昭仁氏
住  所:滋賀県神崎郡能登川町林43−2
T E L:(0748)42−0195

「近江だるま」の歴史について教えて下さい。
「近江だるま」は大正時代末に能登川町佐野出身の寺井大門氏が製作を始めたとされています。

photo
「近江だるま」には漫画的な表情を持つ「男だるま」と上品に微笑む「女だるま」、そしてかわいらしい表情の「姫だるま」の三種類があります。「近江だるま」の表情は京都の伏見人形の影響を受けているとも考えられています。大津絵についても中仙道を通じて伏見人形の影響を受けていると考えられており、「近江だるま」と大津絵には共通した表情の面白さを感じ取ることができます。

「近江だるま」は二度の世界大戦中には縁起物(転んでも起き上がるだるまなので)として戦地に送られることが多かったようです。しかし、大門氏が亡くなると同時に「近江だるま」の伝承は一時期断絶してしまいました。その後、大門氏の作成しただるまの魅力に惹かれ、全国各地の郷土玩具の収集家が「近江だるま」の復活を強く望むようになりました。大門氏の作成しただるまの一番の魅力は、その表情にありました。きりっとした表情の裏に、どこか「困ったなぁ」とでも言いそうな、なんとも表現し難い表情を持っていたのです。そのような魅力をもっただるまを復活させたのが大門氏の子息の清二氏になります。多くの収集家が待ち望んだ「近江だるま」の復活だったのですが、清二氏は不慮の事故により他界されてしまい、残念ながら「近江だるま」の伝承もそこで途絶えてしまうことになったのです。そのため、現在では幻の郷土玩具となり大門氏の作品は能登川町立博物館で大切に保管されています。
「近江だるま保存会」を立ち上げられたきっかけをお聞かせ下さい。
photo
「近江だるま保存会」を立ち上げたのは今から約20年前のことです。当時、能登川町に伝わる昔話を耳にする機会があり、そこに「近江だるま」が幻の郷土玩具として紹介されていました。私たちの生活する能登川町にこのような素晴らしい玩具が存在していたことを知り、嬉しさとともになんとか復活させることはできないかと考えました。そこで10名ほどで「近江だるま保存会」を設立し活動を開始することにしました。活動に際して能登川町からの協力もいただき、町全体で「近江だるま」の魅力を再発見する取り組みを始めました。幻の郷土玩具を復活させることは容易なことではなく、まず寺井家に事情を話し、「近江だるま」製作に必要不可欠の木型を借用することから始めました。製作方法については二代目の清二氏の奥様に教えていただき、何とか「近江だるま」を製作することに成功しました。

現在の保存会メンバーの皆さんは、郷土玩具に大変興味のある方、保存会の活動を見ていて郷土玩具の素晴らしさに気づかれた方、友人に誘われた方など、動機は様々ですが活動時は真剣な表情の中にも笑顔を見せながら楽しく活動しています。
「近江だるま保存会」ではどのような活動をされているのですか。また、活動を通じてどのような感想をお持ちですか。
活動は月に一度、能登川町立博物館の協力を得て「近江だるま」の展示会や製作研修会の開催、また町の小学校から要請があれば出張講座を行ったりしています。活動の内容はできるだけ多くの方に「近江だるま」を製作してもらい、関心を持っていただけるように考えています。

photo
「近江だるま」の製作過程や魅力を伝えていくために保存会メンバーは楽しみながらも日々研究を重ねています。理想のだるまを作りたい、大門氏のだるまに一歩でも近づきたいと悪戦苦闘しています。不思議なことに一番最初に製作しただるまが一番満足できる作品になっていることがよくあります。何度も製作するうちにだんだんと欲が出てきてしまい、完成してみると不満が残ったりしてしまいます。無心で製作することが、どれほど重要で難しいことなのかを痛感しています。

活動を通じての感想として、今回は小学校での製作授業を行ったのですが、だるまが完成したときの子供達の表情を見ると、この活動をしてきて本当に良かったと感じます。子供達には「近江だるま」の歴史や特徴を伝えるよりも、まずは製作を通じて「近江だるま」について何らかの関心を持ってもらいたいと考えています。そして将来、大人になったときに能登川町の郷土玩具には「近江だるま」があるということを思い出すきっかけになればと考えています。

photo
また、保存活動を通して能登川の「近江だるま」だけでなく全国の郷土玩具にも興味を持つようになりました。それぞれの地域に伝わる郷土玩具には、その地域の生活、習慣などの文化を感じ取れるものが多くあります。郷土玩具を子供の遊び道具としてとらえるだけでなく地域文化をあらわしているものと考えると、ますます「近江だるま」の保存に熱が入ります。そして、全国の郷土玩具収集家の方や愛好家の方に自慢できるような能登川町、そして「近江だるま」にしていきたいと考えています。
今後の夢、目標についてお聞かせ下さい。
photo
「近江だるま保存会」の活動をいつまでも楽しく継続させていきたいと考えています。そして50年後には、今回活動に参加してくれた小学生のみんなが保存会の中心メンバーになってくれていることを望んでいます。また、能登川町の貴重な財産である「近江だるま」に町中の皆さんが関心を持っていただけるように活動をしていきたいです。決して製作は安易なものではありませんが、ぜひ一度皆さんに製作を通じて「近江だるま」の魅力を感じていただきたいです。
(2003年11月取材)
ページのトップへ
琵琶湖発人間探訪目次へ
プライバシー・ポリシー | ご利用条件
Copyright(C) 2003 AYAHA Corporation. All Rights Reserved.