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琵琶湖発人間探訪

延木由起子さん
延木由起子さん
鳥瞰図(ちょうかんず)作家
延木由起子(のぶきゆきこ)さんを訪ねて

 空高く飛ぶ鳥の目、上方からのパノラマ視界を、私たちに与えてくれる鳥瞰図。 今回は30年余り鳥瞰図を描き続けている延木由起子さんに、その歩みや作品に込める思いを伺いました。


鳥瞰図とは

 鳥瞰図は広い土地を上空から見下ろしたような形で、 建物や自然を立体的に細かく描く図法です。 お寺や神社などから依頼を受けて、 境内の案内板を手掛けることが多いですね。 その他にも観光スポットや地域一帯を描くこともあります。
 鳥瞰図の制作は、葛飾北斎や歌川広重の時代と同じで、 まずは描く場所を歩き回ってスケッチすることから始めます。 様々な角度から取材をしたら、 次は一枚の絵になるように下図を組み立てます。 どこまでを絵に入れるか、どこに視点を置くか。 見えない部分は想像で描き、 また依頼主の要望に応じてデフォルメすることもあります。
 この下図の組立てが一番大変で、作家の個性が出る作業です。 下図で薄く目安の線は引くけれど、 本番になったらフリーハンド、手描きです。 道具は鉛筆と消しゴムを用い、仕上げに彩色することもあります。

祖父、父に続く 三代目の鳥瞰図作家に

 我が家は祖父も父もこうした鳥瞰図を描いてきた作家で、 私は幼い頃から鳥瞰図に触れてきました。 高校生の頃に「将来はこの道に」と考え出し、 大学卒業後に父の仕事を手伝い始めました。
 当時、父は私が描く家を見て「誰も住んでいないお化け屋敷や」 と言ったものです。何が違うのかと見比べてみると、 父の絵は、木に鳥がとまっている、森にはかぶと虫がいる、 そんな気がするんですね。 私もいつか父のようなイキイキとした鳥瞰図を描きたいと思っていました。
 しかし一連の過程を学べば学ぶほど、父との差を感じました。 父の絵は線一本でも人生観が出る。感覚で描いているのに、 お寺の屋根の高さや傾斜はいつも絶妙です。 一方、私の線は消してはつなぎを繰り返し、 生きるのに不器用といった感じ。想像力も父には及ばず、 屋根の形が分からなかったら平面図を描いて形をつかんでいました。


感覚派の父とは違う技法で、 地元の山々を正確に描く

 こうした古くからの技法に新たな試みを加えたのは30代に入った頃でした。 当時住んでいた大津市葛川の地域を鳥瞰図にしてみないかと 父に勧められたのがきっかけで、 集落を囲む山々を正確に描くための技法を模索しました。
 その方法を懸命に探るうちに、 ブロックダイヤグラムという技法に辿り着いたんです。 これは、地形図を基にして山を正確に立体化する3Dに近い技法。 詳しく知るために大学から地理学の本を借りて読み解くこともしました。 そうして自分なりのアレンジも加え、絵は半年後にようやく完成。 自分に合う技法を得て、自信がつきました。



重ねた経験も絵に込め、 心和む光景を描きたい

 その後は、朝日新聞滋賀版に掲載の機会をいただいて湖北水鳥公園や琵琶湖博物館など県内各所を描いたり、 京都駅ビルなど市街地も手がけました。現在は滋賀県文化振興事業団の季刊誌『湖国と文化』に執筆させていただいています。
 また、教室で一般の方に鳥瞰図を教えたりもしています。できれば小中高校や、美術大学でも講義をしたいですね。 多くの方に鳥瞰図に触れてほしいですし、広い範囲を上空から見るという普段できない経験をしていただきたいです。
 私自身はもっと経験を積んで味のある線を引けるようになりたい。そのためにはいろいろな挑戦をと、 滋賀県の祭の取材を進めているところです。長浜曳山まつりの子ども歌舞伎など、山車や行列の人々を上方から描く、 今までにない鳥瞰図にトライしたいと考えています。
 そして見た人が癒される絵を描き続けていきたいですね。例えば絵の中に我が家があり、夏はここで花火が上がるな、 ここに昆虫が集まる木があったなと、そんな風景を思い出すような。依頼主の気持ちをそのまま絵に込めて、 喜んでいただけたら嬉しいです。


(2015年6月取材)
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