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琵琶湖発人間探訪

東之湖さん
東之湖さん
雛匠 東之湖(とうこ)さんを訪ねて

 「感情が入っているようだ」と評される雛人形たちを、 丹念な手仕事で作りあげる雛匠 東之湖さん。
今回はその人形師としての歩み、 伝統を守りつつ新風を吹き込む取組みについて伺いました。

雛匠 東之湖(人形の布施)
住所 :滋賀県東近江市五個荘竜田町661-3
電話 :0748-48-6288
ホームページ  http://doll-touko.com

幼い頃に慣れ親しんだ、雛人形の雅な世界

 平安時代から江戸時代、そして現代へ。 形を変えながら長く継がれてきたお雛さんの世界に、 私はごく幼い頃から触れてきました。お雛さんはお顔、髪の毛、 衣装など分業で作られます。私の父はそれらをまとめ、総仕上げする役をしていて、 よく私を職人さんの工房に連れて行ってくれたのです。 職人の鮮やかな手さばきに見とれ、糸や和ばさみといった道具にも馴染んで、 将来はこの道に進むのかなと思っていました。
 ほどなく家族で京都から滋賀に転居。 小学生で始めたラグビーに夢中になり、 高校2年で高校日本代表に選出されました。大学から推薦入学の話も舞い込み、 正直迷いましたが、自分はものを作るのが好きだし職人の道に入ろう、 やるなら一から勉強しようと高校卒業後、 小さいときに可愛がってくれた職人さんたちの元を回って教えていただきました。
 胴体づくりから衣裳の裁断、縫製、着付け、顔付けに至るまで学び、 自ら平安貴族の衣装やしきたりも研究しました。 一通りの知識と技術を身につけた23歳、 父と組んで活動し始めた矢先、体に異変が起きます。 根本的な治療法のない難病にかかってしまったのです。

琵琶湖の色を映したような、湖東の伝統織物を創作雛に

 重い症状に苦しみ、人に会うのも億劫になって引きこもりました。ただ、 お雛さんを作っているときだけはリラックスできるんですね。治療薬で症状を抑えつつ、 いくつも作りました。精魂込めた人形は業界の展示会で「全国人形通産大臣賞」を受賞。 周囲の励ましもあり、病気とは長く付き合っていく覚悟で2002年、 30歳で祖父の故郷・五個荘町に店舗兼工房を構えました。
 翌年には東京の百貨店で開かれた滋賀県の物産展に出品します。 ところが同時期に著名な方々の雛人形展があって結果はさんざん。 百貨店のバイヤーさんから「良いものは持っている、 ただし表現の仕方を変えないと通用しない」と言われ、 ハッとしました。
 人の目を惹きつける創作雛を作らねば。 模索するうち、湖東地方に伝わる麻織物、 琵琶湖の青をモチーフにした近江上布があると知りました。 その作り手で伝統工芸師の大西新之助さんを訪ねると 「使ってくれたらいいよ」と快諾いただきました。
 ここから苦戦が始まります。扱いをしくじると生地が嫌がると言いますか、 当初の近江上布はかたく、縫い針が折れることもあったんです。 柔らかくしようと叩いて糸を潰すなどいろいろ試みました。
 試行錯誤を経て2004年、近江上布をまとった女雛「聖水の舞」を発表します。 今までにないと反響を呼び、五個荘近江商人屋敷に展示すると「男雛も作って」 と観光客からリクエストが寄せられました。おかげさまで、 その後も新作が期待される人気シリーズとなり、「清湖雛」と命名されました。


作り手、贈る人の心を込めた 雛人形をこれからも

▲柔拵えと強拵えの技を微妙に融合させます
 私が手がけたお雛さんは、滋賀県からの親善の贈り物としてブラジル、 中国など海外にも渡りました。また2012年には東北復興支援にと人のつながりを表した「絆雛」を宮城県岩沼市に寄贈、 以後も毎年復興の歩みに合わせたものをお贈りしています。
 オーダーメイドでは顔立ちや衣装など個々の希望に、そして贈る人の気持ちに寄り添って、 長く愛される雛人形を作るよう心がけます。職人のこだわりは多々あって、 衣装を着せつける際のバランスもその一つ。生地そのものの曲線を活かす柔拵えと、 直線的なラインを出す強拵えという技があるんですね。この二つを微妙に融合させ、袖はふわっと柔らかく、 襟元はきりりと整えます。これは独自の手法です。
 住環境や暮らし方が変わり、段飾りを求める人は多くありません。 そういう時代にもっとお雛さんに注目をと、平安貴族が着ていた黒紫を再現して着せたり、 洋室にも合うお雛さんを作ったりと伝統文化を守りながら意欲的に新しい取組みもしています。
 私はお雛さんを作るのが何より好きなんです。今までしてきたことを大切に、 次にどうするかを楽しみながら考えて、人形づくりを続けていきたいですね。


(2015年11月取材)
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